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 あたたかくなるこの季節に多くの人が悩まされる鼻のムズムズ。その原因は、花粉症、ハウスダストなどのアレルギー性鼻炎かもしれません。ムズムズの原因を専門の医療機関で調べ、その人の症状にあった治療をするのが、この時期を快適に過ごす近道です。病気の特徴やふだんの生活でできる対処法などについて、アレルギーや鼻・耳の病気に詳しい日本医科大学武蔵小杉病院(川崎市)の松根彰志さんに聞きました。

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松根彰志(まつね・しょうじ)さん=日本医科大学教授(耳鼻咽喉科学)、日本医科大武蔵小杉病院(川崎市)耳鼻咽喉科部長、NPO花粉症・鼻副鼻腔炎治療推進会事務局長

■鼻水・鼻づまり・くしゃみが三大症状  鼻がムズムズする原因として考えられるのは、感冒と言われるいわゆる風邪のほかに、花粉やハウスダストなどが原因のアレルギー性鼻炎があります。それ以外にも、気温の急激な変化によって起こるアレルギーではない鼻炎もあります。
 これらに共通するのは、鼻水・鼻づまり・くしゃみの症状です。松根さんは「アレルギー性鼻炎はよく風邪と混同されるが、大きな違いがあります」と言います。アレルギー性鼻炎には次のような特徴があります。このような症状があったらアレルギー性鼻炎を疑った方がいいそうです。
 

【アレルギー性鼻炎の特徴】

・症状が長期間(1~2カ月以上)続く(風邪は数日~1週間程度)

・のどがイガイガする(風邪のような痛みはない)

・皮膚が赤くなったり、かゆくなったりする

・目がかゆくなる

■アレルギー性鼻炎には「季節性」と「通年性」がある  アレルギー性鼻炎は、花粉が飛散する季節に症状が出る「季節性」と、1年を通じて症状が出る「通年性」があります。季節に症状が出る花粉症には、主なものに2月から5月ごろのスギやヒノキ、5月ごろから夏に多いイネ科のカモガヤなどのほか、秋に多いブタクサなどがあります。今の時期に多いスギ・ヒノキは「せいぜい続いても5月のゴールデンウィークのころまで。その時期を過ぎても鼻炎が長引くようなら季節性だけでなく、他の花粉や通年性のアレルギーが混ざっているかもしれません」と松根さんは言います。
 

【花粉症の原因となる主な植物の開花時期】※時期は地域によって前後します

・スギ(2~5月)

・ヒノキ(3~5月)

・シラカンバ(4~6月)※主に北海道

・カモガヤ(5~10月)

・ブタクサ(8~9月)

【1年を通じて症状が出る鼻炎(通年性)】

・ダニ、家の中のちり(ハウスダストなど)

■アレルギー性鼻炎の人が増えています  アレルギー性鼻炎の患者は増えており、今後も増えるだろうと言われています。松根さんによると、以前は10代後半~40代ぐらいが多かったが、最近は低年齢化と高年齢化が同時に進んでいるそうです。子どもの場合は、ダニ・ハウスダストなどの通年性が多く、30代以降になるとスギ花粉症が多い傾向だそうです。
 昔に比べて、気密性が高い住環境が増え、ダニが繁殖しやすくなったことや、戦後の植林政策で大量に植えられたスギなどの花粉が飛散するようになったことが原因にあります。他にも、食生活が変化したことや不規則な生活、ストレスの増加なども関係していると考えられます。

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■医療機関で原因特定、適切な治療を  症状だけでは、原因を特定することが難しいこともあるので、耳鼻咽喉科など専門の医療機関で検査をすることが治療の第一歩です。松根さんは「どの季節にどういう薬を使うかや、どのような対策をとるべきかは、原因を特定することで可能になる」と強調します。
 特に自分の症状を正確に伝えることが難しい子どもの場合は、「親は風邪だと思い込んでいても実はそうでないこともあります。症状があるときは、医療機関で検査をきちんとした方がいい」と言います。
 医療機関では、いつごろから症状があるのか、どんな症状かなどを問診で確認するほか、血液検査や皮膚試験などでアレルギーが起きているかを調べ、原因を特定します。
■治療の基本は、薬物療法と生活指導  どのような治療をするかは、具体的な症状や重症度などを考慮して判断します。薬で症状を和らげる薬物療法をしながら、原因物質が鼻に入らないように生活を改善することが、アレルギー性鼻炎の治療の中心になります。
 薬物療法では、症状を引き起こす化学物質の働きを薬でブロックします。くしゃみや鼻水に効果がある抗ヒスタミン薬や、鼻づまりに効果のある抗ロイコトリエン薬、くしゃみ、鼻水、鼻づまりに全般的によく効くステロイド薬などがあります。内服する薬や鼻に噴霧するタイプがあります。
 薬による治療は症状を和らげるのが目的ですが、より根治に近い状態を目指すのが免疫療法です。原因物質を注射や口(舌の下)から体内に入れる方法です。2~3年続けることが必要ですが、自宅でも行えますしアレルギーを治す可能性がある方法として注目されています。
 薬などでも鼻づまりなどの症状を改善できない場合には、手術という方法もあります。鼻の粘膜を切除して炎症を抑える手術、鼻の中の通り道が曲がっていたり、狭くなっていたりして通りが悪くなっている状態を改善する手術、鼻水の分泌腺を刺激する神経を切る手術があります。
 

【主な治療方法】

・生活指導:生活の中で原因となる物質を除去したり、減らしたりする

・薬物療法:症状を引き起こす化学物質の働きをブロックする

・免疫療法:注射や舌の下から原因物質を体の中に入れて、反応を弱くする

・手術:鼻づまりがひどい場合に、粘膜を切除するなどして炎症を抑える

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■ふだんの生活のなかで、できることは?  薬などの治療以外に自分でできるセルフケアとして、まず、鼻の中に入る原因物質を除去したり減らしたりすることがあります。花粉でもダニでも、家の中をこまめに掃除することから始めましょう。

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 花粉症の人は、飛散量が多いこの季節は、飛散情報をテレビやインターネットなどでこまめにチェックしましょう。晴れて風が強い日は花粉が多く飛散します。雨の降った後も要注意です。雨の日は水たまりに花粉がたまっていますが、雨が上がり、水たまりが渇くと、風に飛ばされ花粉が舞うようになるからです。
 そのほか、花粉症対策として松根さんは次のようなことをおすすめしています。

【花粉症対策】

・花粉情報をこまめにチェックする

・外出時はマスクやめがねを着用する

・外出から戻った時は、コートなどの衣服についた花粉を落とし、洗顔やうがいをする

・飛散量が多いときは家の窓や戸を閉めておく

  ■ダニなどハウスダストでは  通年性のアレルギー性鼻炎の原因となるダニなどを除去するためには、こまめに掃除機で床を掃除しましょう。カーペットや敷物、布張りのソファ、畳はダニの巣になりやすいです。なるべく使わないようにするか、できるなら床はフローリングにしてみてはどうでしょうか。布団を干した後も、掃除機でさらに吸い取る。ぬいぐるみにもダニは多くいることがあるので、こまめに洗ったり、古いものは捨てたりした方がいいです。猫などのペットもダニを運んできます。できれば飼わない方がいいですが、飼う場合は、家の外で飼いましょう。

【ダニ対策】

・カーペット、敷物、畳、布張りのソファはやめて、できればフローリングに

・干した布団にも掃除機をかける

・ぬいぐるみは洗うか捨てる

・家の中で猫などのペットを飼わない

■市販薬は忙しい人向け。使うときには注意も  最近は薬局やドラッグストア、インターネットでも買える花粉症や鼻炎の薬が増えています。医療機関を受診する時間がないような忙しい人は、そうした市販薬を使うこともできます。ただ、松根さんは「あくまで急場しのぎとして利用するのはいいですが、時間ができたら専門の医療機関を受診し、その人にあった治療を受けるようにしてください」と言います。
 市販薬の場合、医師の処方とは違い、症状や原因から複数の選択肢を組み合わせることは難しいので、症状が改善しないこともあります。「2~3週間ほど使って効き目がないようなら、医療機関を受診してはどうでしょうか」と言います。
 市販薬を使うときには以下のような点に注意したうえで、薬剤師に症状などをきちんと説明し、自分にあった薬を選ぶようにしてください。

【市販薬を使うときの注意点】

・副作用のおそれがあるので、複数の薬を同時に使わない

・鼻づまりを改善する一部の点鼻薬は、使いすぎると粘膜が腫れて鼻づまりがひどくなる「薬剤性鼻炎」のおそれがある

・眠気や目のかわきが出る薬もある

■規則正しい生活で体調管理を  つらい季節を快適に過ごすためには、「規則正しい生活をして、食事や睡眠をしっかりとりましょう」と松根さんは言います。アレルギーは自律神経のバランスが崩れると、なりやすくなるので、ふだんから体調管理に気をつけましょう。くしゃみや鼻水、鼻づまりの三大症状が出るのは、体の防衛反応が働いている証拠ともいえます。症状をやわらげるための治療や対策はいろいろあります。松根さんは「あまり神経質にならずに病気としなやかにつきあってはどうでしょうか」と話しています。
 

【動画】専門医がアドバイス! アレルギー性鼻炎への備え

 

<アピタル:インタビュー・医療>

北林晃治

北林晃治(きたばやし・こうじ) 朝日新聞記者  

2002年朝日新聞社入社、北海道報道部、さいたま総局をへて、東京本社生活部、科学医療部。厚生労働省など社会保障、医療分野を取材。東日本大震災後、社会部をへて再び科学医療部へ。2016年9月からアピタル編集部員